2025/08/10
前回の記事「高齢者施設で加湿器を使う際のリスク」では、利用者特性と施設環境の視点からリスクを整理しました。今回は、それらのリスクを踏まえた具体的な対策について解説します。
ポイントは「完璧な管理」ではなく「継続できる管理」です。理想的だけど現場では続かない対策ではなく、施設担当者が日常業務の中で無理なく実行できる内容に絞って整理しました。
機種選定の考え方
高齢者施設での使用を前提にすると、機種選定の段階で考慮すべき点があります。
方式の選び方
前回の記事で整理した通り、各方式にはそれぞれ異なるリスク特性があります。高齢者施設では、以下の理由から気化式またはハイブリッド式(加熱気化式)が選ばれることが多いです。
| 方式 | 高齢者施設での適性 |
|---|---|
| 気化式 | 熱傷リスクがなく、過加湿になりにくい。フィルター管理が必要だが、定期的な交換で対応可能。 |
| ハイブリッド式(加熱気化式) | 気化式の特性に加え、加熱による衛生面の向上が期待できる。 |
| 超音波式 | 衛生管理の負荷が高く、施設運用では徹底が難しいケースが多い。 |
| スチーム式 | 衛生面では優れるが、熱傷リスクがあり認知症の方がいる環境では注意が必要。 |
あると便利な機能
チャイルドロック機能は、認知症の利用者がいる施設では重要です。誤って設定を変えてしまう、電源を切ってしまうといった事態を防げます。詳しくは「加湿器のロック機能は誤操作防止のためのもの」を参照してください。
湿度表示機能があると、現在の室内湿度を把握しやすくなります。停止中も湿度を表示できる機種であれば、加湿器を使う前の状態確認にも役立ちます。
自動運転機能があれば、設定湿度に達すると自動で運転を調整してくれるため、過加湿を防ぎやすくなります。
加湿能力の目安
部屋の広さに対して加湿能力が不足していると十分な効果が得られません。逆に、小さな部屋に大きすぎる機種を置くと過加湿になりやすくなります。メーカーが提示する「適用床面積」を参考に、設置する部屋に合った機種を選びましょう。「加湿器のオーバースペック問題」も参考になります。
設置場所の選定
機種を選んだ後は、どこに置くかが重要です。高齢者施設では、一般家庭とは異なる視点が必要になります。
利用者の動線を考慮する
認知症の方の徘徊動線上に置かない、車椅子や歩行器の通行を妨げない場所を選ぶことが基本です。「手が届かない」だけでなく、「つまずかない」「ぶつからない」という視点も持ってください。
コード類の処理
電源コードは転倒・つまずきの原因になります。壁沿いに這わせる、モールで保護するなどの対策が必要です。コードが通路を横切る配置は避けましょう。
避けたい設置場所
エアコンの直下は避けてください。エアコンの気流により、加湿器の湿度センサーが正しく機能しなくなることがあります。また、加湿した空気がすぐに拡散されてしまい、効果が薄れる場合もあります。
窓際も避けた方が無難です。窓は室内で最も温度が低くなる場所であり、結露の原因になりやすいためです。
日常の水管理
加湿器の衛生状態を左右するのは、日々の水管理です。といっても、複雑なことをする必要はありません。
水の入れ替えについて
運転中に水が減った場合の継ぎ足しは問題ありません。避けるべきなのは、タンクに残った水を何日も放置し、その古い水に新しい水を足して使うことです。
使用しない日が続いた場合は、タンクの水を捨ててから新しい水を入れてください。週末に施設が休みになる場合なども同様です。
使用する水について
水道水を使用してください。水道水に含まれる塩素が、ある程度細菌の繁殖を抑えてくれます。
アロマ液を入れることや、ミネラルウォーターを使用することは避けてください。メーカーが推奨していない水を使うと、故障や衛生上の問題につながる可能性があります。「水の種類と衛生リスク」も参照してください。
定期メンテナンス
日常の水管理に加えて、定期的なメンテナンスも必要です。頻度ごとに整理します。
| 頻度 | 作業内容 |
|---|---|
| 週1回程度 | タンク内を水で軽くすすぐ。本体外装をやわらかい布で拭く。 |
| 月1回程度 | フィルターの状態を確認。汚れがひどい場合はクエン酸洗浄、または交換。 |
| シーズン終了時 | フィルターの交換、または十分に乾燥させてから保管。タンク・トレイも乾燥させる。 |
フィルターの交換時期はメーカー・機種によって異なります。取扱説明書を確認し、推奨時期を超えて使い続けないようにしましょう。「フィルターの黄ばみと対処法」も参考になります。
管理の仕組み化
高齢者施設では、複数の職員が交代で勤務しています。「気づいた人がやる」という運用では、結果的に誰もやらない状況が生まれがちです。継続的な管理のためには、仕組み化が欠かせません。
チェック表の活用
「誰が・いつ・何をしたか」を記録するチェック表を作成し、加湿器の近くに掲示します。水の入れ替え、週次の清掃など、項目ごとにチェック欄を設けると漏れが減ります。
担当者の明確化
「水の入れ替えは日勤の最後に担当者が行う」など、誰がいつやるかを明確にします。シフト表や業務フローに組み込むことで、属人化を防げます。
複数台運用時の工夫
施設で複数台の加湿器を使用する場合、機器ごとに番号やラベルを付けて管理します。「1号機は○日に清掃済み」といった情報を可視化することで、どの機器の管理が滞っているかを把握しやすくなります。
特別養護老人ホームでの導入事例では、40台の加湿器を運用する際の課題と工夫が紹介されています。
湿度管理の目安
加湿器を使う目的は「適切な湿度を保つこと」です。低すぎても高すぎても問題があります。
目標値の考え方
一般的に、室内湿度の目標値は40〜60%程度とされています。40%を下回ると乾燥によるウイルスの活性化や、皮膚・粘膜への影響が懸念されます。
一方、60%を超えてくると加湿のし過ぎになっていきますので注意が必要です。なお、一般に冬場に室内湿度を60%超にするのは難しいため、実際に超えることはまずないとは思いますが、念のため意識しておくと良いでしょう。
湿度計の設置
加湿器本体に湿度表示がある場合でも、部屋の別の場所に湿度計を置いておくと、より正確な状況把握ができます。加湿器の近くと離れた場所では湿度が異なることがあるためです。
トラブル発生時の対応
日常的に管理していても、トラブルが起きることはあります。よくあるケースと対応を整理します。
異臭がする場合
カビや雑菌の繁殖が疑われます。すぐに使用を中止し、タンクとフィルターを確認してください。洗浄しても臭いが取れない場合は、フィルター交換を検討します。
結露がひどい場合
冬場に加湿すれば、窓などに結露が出るのはある程度自然なことです。ただし、結露がひどくてあまりにもベタベタになる場合は、湿度設定を下げる、換気を適宜行う、窓際に加湿器を置かないといった対応を検討してください。「結露&カビの対策」も参考になります。
利用者が加湿器に触れてしまった場合
設置場所の見直しを検討します。現在の場所が利用者の動線上にある、手が届く位置にあるなど、配置に問題がないかを確認してください。必要に応じて、より安全な場所への移動を行います。
まとめ
高齢者施設での加湿器管理は、特別なことをする必要はありません。大切なのは「当たり前のことを、継続できる形で仕組み化すること」です。
この記事のポイント
1. 機種選定は施設環境に合わせて
熱傷リスクのない気化式・ハイブリッド式が選ばれやすい。チャイルドロック、湿度表示、自動運転などの機能も確認する。
2. 設置場所は利用者の安全を最優先に
動線を避け、コード処理に注意。エアコン直下・窓際も避ける。
3. 水管理はシンプルに
古い水への継ぎ足しを避け、水道水を使用する。
4. 定期メンテナンスを習慣化
週1回のタンク清掃、月1回のフィルター確認、シーズン終了時の保管準備。
5. 管理を仕組み化して属人化を防ぐ
チェック表、担当者の明確化、複数台のラベル管理。
前編のリスク編と合わせて、施設での加湿器運用の参考にしていただければ幸いです。
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