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加湿器に純水や精製水を使うべきか? 水の種類と衛生リスク

time 2025/09/02

この記事の要約:

1,加湿器に入れる水は「水道水か純水・精製水か」で意見が分かれている。
2,水道水
 ・残留塩素により細菌の繁殖をある程度抑制。
 ・ただし無菌ではなく、タンクやフィルターの放置で菌・カビが増える。
 ・地域によって硬度差があり、硬水では「ホワイトダスト」が出やすい。
3,純水・精製水
 ・化学的にきれいだが、消毒成分がないため雑菌繁殖しやすい。
 ・保存や管理を怠ると、空気中に菌をばらまくリスク。
 ・「化学的にはきれい、微生物学的には安全とは限らない」。
4,加湿器の種類と水の相性
 ・スチーム式:沸騰で菌死滅、比較的安全。純水も使用可。
 ・気化式:水中の菌が空気に混ざる。純水利用時はタンク清掃必須。
 ・超音波式:水中菌をそのまま拡散。白い粉防止に純水推奨する記事もあるが最も危険。
5,情報が食い違う理由
 ・純水推奨派:ミネラルによる故障・ホワイトダストに注目。
 ・水道水推奨派:雑菌繁殖リスクに注目。
 ・矛盾ではなく「どのリスクを重視するか」の違い。
6,研究・公的機関の知見
 ・厚労省:加湿器で繁殖した菌が感染源になるリスクを警告。
 ・論文(PMC, Wiley など):超音波式での菌・ミネラル拡散を実験的に確認。
 ・蒸留水でも「必ず無菌ではなく」、清掃管理が不可欠。
7,結論
 ・純水・精製水は管理が難しく、スチーム式以外ではリスクが高い。
 ・水道水は塩素で雑菌繁殖を抑え、日本の軟水ならホワイトダストも軽微。
 ・加湿器メーカーも水道水を推奨。
 ・実際には「どの水を使うか」よりも日々の手入れ(掃除・水交換)が安全性を左右する。
 ・特別な理由がなければ「水道水一択」が現実的で安全。

冬場や乾燥の季節になると、多くの人が加湿器を使います。そのときに必ず出てくる疑問が「どんな水を入れればいいのか?」という問題です。
「水道水でいいの?」「純水や精製水のほうが体に良さそう?」といった声はよく耳にします。実際、インターネットを検索すると、「純水や精製水を推奨する記事」と「水道水一択の記事」の両方があり、混乱するのも無理はありません。

ここでは、

純水や精製水を加湿器に使うとどうなるのか、水道水と比べたメリット・デメリット、そして衛生面でのリスク

について、公的機関や論文の知見をもとに整理します。

 

水道水と純水・精製水の違い

水道水

・塩素消毒(残留塩素)があるため、ある程度細菌の繁殖を抑制。
・ただし「無菌」ではなく、タンクやフィルターで放置すれば菌やカビが増える。
・地域によって硬度(ミネラル成分量)が違う。硬水地域では「白い粉(ホワイトダスト)」が出やすい。

純水・精製水

・イオンや不純物をほとんど含まない純度の高い水。
・しかし塩素などの消毒成分は含まれないため、雑菌が繁殖しやすい。
・保存やタンク管理を誤ると、細菌が急速に増え、それがそのまま空気中に放出される。

つまり、「化学的にはきれい」だが「微生物学的には安全とは限らない」という点が重要です。

※純水と精製水は厳密にはもう少し違いがありますが、「消毒成分は含まれないため、雑菌が繁殖しやすい」のは同じであるため、ここでは同列に用いています。

加湿器の種類と水の相性

1. スチーム式(加熱式)
・水を沸騰させて蒸気を出す。
・高温により細菌やカビが死滅するため、比較的安全。
・純水を使ってもリスクは少ない。

2. 気化式
・濡れたフィルターに風を当てて水分を蒸発させる。
・水中で菌が繁殖していると、そのまま空気中に混ざる。
・純水を使うときは、タンク掃除を徹底しないと逆効果。

3. 超音波式
・水を微細な粒子にして霧状に吹き出す。
・水中に細菌がいれば、そのまま室内に拡散する。
・白い粉問題(ミネラルの飛散)を避けるため純水を推奨する記事もあるが、衛生管理を怠ると最も危険。

なぜ情報が食い違うのか?

純水・精製水推奨派

・海外の記事やメーカー推奨は、「水道水に含まれるミネラル」に注目。
・ミネラルが多いと、機器の故障や「ホワイトダスト」による健康リスクがある。
・そのため「蒸留水・精製水の使用を推奨」と書かれる。

水道水推奨派

・日本のメーカーや衛生学的観点は、「雑菌繁殖リスク」に注目。
・精製水・純水には塩素が入っていないため、タンク内で菌が増えやすい。
・結果として「水道水のほうが無難」と案内される。

→両者は矛盾ではなく、どのリスクを重視するかの違いなのです。

研究・公的機関が示すリスク

・厚生労働省(レジオネラ症関連)
加湿器などに繁殖した菌が空気中に拡散し、感染源になる可能性を警告。スチーム式は比較的安全だが、清掃・水交換が不可欠。

・PMC論文(2023, Mis(perception…Use of Unsterile Water in Home…))
滅菌されていない水を使うと、非結核性抗酸菌(NTM)やミネラルがエアロゾルとして飛散する事例が確認された。呼吸器デバイスでは「滅菌水・蒸留水・煮沸冷却水」が必要と指摘。
→ ただし重要なのは「どんな水でも、お手入れを怠れば雑菌が繁殖する」という点。

・Wiley論文(2022, Yang et al.)
超音波式加湿器は室内の細菌濃度を上昇させ、病原性微生物の拡散につながることを実験的に示した。

・Public Health Ontario レポート
蒸留水でも「必ずしも無菌ではなく」、感染事例もある。医療現場では滅菌水の使用が推奨される。

結論:純水・精製水は管理が難しい

純水は「不純物がない=きれいな水」ですが、それは化学的な話であって、衛生的に無菌を保証するものではありません。
 

スチーム式なら比較的安全に使える
気化式・超音波式では特にリスクが高い
水道水は塩素のおかげで、雑菌繁殖が抑えられる分“無難”

「純水・精製水のほうが体に良さそう」と思いがちですが、日常使用においてはむしろ日々のお手入れを徹底できるかどうかが安全性のカギになるのかなと思います。

純水・精製水を使う理由がないなら、水道水の一択

まとめると、「純水・精製水=良い水だから加湿器に最適」とは言えないというのが結論です。

清潔さを維持できるなら純水・精製水も選択肢になり得ますが、そうでなければ「水道水のほうが安全」という逆説的な答えになります。

現実問題として、家庭で「純水や精製水を毎回新しく開封・使用し、加湿器のタンクを毎日洗って乾かす」というのは、かなりの心理的・実務的な負担になります。論文や公的機関の報告も示すように、水の純度そのものよりも「管理状態」の方が、はるかに感染リスクに直結するんですよね。

一方、水道水であれば:

  • 塩素が残っているので細菌繁殖をある程度抑制してくれる
  • 日本の水道水は軟水であり、海外のような「ホワイトダスト問題」が深刻ではない
  • ほとんどの加湿器メーカーも「水道水使用」を推奨している

という点から、特別な理由(例:医療上、どうしてもミネラルを避ける必要がある)がなければ、水道水一択が現実的で安全なんです。

 
 
参考文献(一部抜粋)

・厚生労働省. レジオネラ症を防ぐために.
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00393.html

・Mis(perception…Use of Unsterile Water in Home…) PMC, 2023. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9881759/

・Yang Z, et al. *Effect of ultrasonic humidifiers on indoor bioaerosol concentration*. Indoor Air, Wiley, 2022.

・Public Health Ontario. *Evidence Brief: Humidifier use in health care*. 2017.

・CDC. Preventing waterborne germs at home.
https://www.cdc.gov/drinking-water/prevention/preventing-waterborne-germs-at-home.html

 

この記事の著者

うるぼく

うるぼく

レンタルのロームの代表者

2019年にレンタルのロームを立ち上げ、高齢者施設・幼保、オフィスなど、室内で利用する清潔で綺麗なレンタル製品を取り扱い開始。本サイトでは加湿器に特化した情報・気づきを発信し、室内と社会全体に潤いをもたらそうとしています。加湿器使用歴20年、加湿器取り扱い歴6年。

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